コレクション: MOVIE MONOLOGUE
僕が初めて映画というエンターテイメントに意識を強く抱いたのは小学 4年生の時に好意を持っていたさっちゃんを映画に誘い出したときだ。その時は2人で鑑賞するべき映画の選別なんてできっこなかった。とにかく2人でバスに乗って2人で映画を観て、親友のまこっちゃんもかっちゃんも知らない2人だけの時間を共有することが目的だった。そんな僕が選んだ映画がセイント・フォーの『ザ・オーディション』。惨敗だった。前の日まで一緒に綿密な計画を立てていた相棒のねーちゃんを恨んだ。そもそも相棒にねーちゃんを選んだことが失策であった。あいつは人の初恋なんてどうでも良い。オモロそうなことを自分の手でよりオモロくし、結果を聞いて爆笑することが生きがいの陰湿なやつだった。しかし、この小さなコミュニティの中で誰に相談できよう。友達に相談??無理だ。友達になんて言ってしまったら学校中の生徒から中傷の眼差しと質問攻めの刑になる。何よりさっちゃんには絶対にリスクを与えられない。母ちゃんか?いや、母ちゃんには黙っておこう。そもそもそういったセンスは壊滅的だ。金の工面だけお願いしたい。こういう時、母ちゃんは察して何も聞かず金をくれた。本当に空気の読めるやつだ。父ちゃん・・・論外だ。というわけで結果頼れる相棒はねーちゃんのみとなったわけだ。
世良公則初主演、映画の中でアイドルグループを結成し、それが本当にアイドルグループになるというフィクションとノンフィクションが一体となった斬新すぎる構成は面白かった。そう、僕の惨敗は僕がその映画を楽しみすぎたことだった。もちろん行きのバスの中では緊張で一言も喋れなかった。映画上演中はさっちゃんそっちのけで映画に一喜一憂し、帰りのバスでその映画の感想と考察を饒舌なまでにたたみかけた。さっちゃんはたまったもんじゃない。結果ねーちゃんのせいではない。全ては僕の幼さのせいだ。
僕の転校という形で初恋が強制終了し、僕は映画と音楽にのめり込んだ。90年代タランティーノからアバンギャルドとスタイリッシュな会話術を学び、リンチから現実という名の虚構を学び、ボイルから本当のかっこよさとファッションを学んだ。
中でも衝撃的だったのはラリークラークの『KIDS』だった。映画の中から当時のアメリカの若者のリアルを知り、アメリカの自由に憧れながら日本人で良かったと心底思えた不思議な体験だった。そしてショートカットのクロエ・セヴィニーが本当に可愛かった。
それから『ユージュアル・サスペクツ』。もうセリフを覚えられるくらい何回も観たのにまた観たくなる。あのラスト数分は何回見てもサブイボができる。今思えば錚々たるメンツが初々しく出演していることに驚かされるが、中でもデルトロは今でも最高に好きな俳優だ。男が思う男の色気が香ばしいほどに漂いすぎている。できればデルトロの顔に生まれたかった。当時美容室に行ってはデルトロの画像を見せ「デルトロにしてください」と言っていた。美容師は少し困惑していたのを覚えている。
映画はいつの時代も時代を切り取るナイフのようなものだと思っている。時に鋭く、時に鈍く。ただ切れ味の悪いナイフほど痛みが残る。だからこそ映画はどんなにつまらない内容でも見始めたなら最後まで諦めずに見ていただきたい。きっとどこかに監督のメッセージがあり、役者の想いがある。そしてそれが自分の人生に投影できた瞬間自分にとっての名作になる。よく「人生は映画だ」と言われるが、『ニュー・シネマ・パラダイス』では「人生はお前が見た映画とは違う。人生はもっと厳しいものだ」とアルフレードは云う。だからこそ人生という映画は感動的になるのだとも思う。その後さっちゃんは立派にヤンキーを務めあげ、若くしてママになった。まこっちゃんは実家の牛舎を継ぎ、忙しくも平和な毎日を過ごしている。かっちゃんは高校卒業後だれも行方が分からなくなり、今も所在不明である。僕は自分探しが終わらず未だにフラフラしている。それぞれがそれぞれ自分の映画のエンディングに向かって物語を創っている。月並みだが、ぜひ自分が主人公の映画を最後まで楽しんでもらいたい。
「自分のすることを愛せ。子供の頃に映写室を愛したように。」byアルフレード

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